ウソの神さま~嘘をつく小学生の息子に困っていたら読みたい話

嘘をつかない人は きっとどこにもいなくて 嘘が良くないと 決めつけないこと 喜ばせようとするため 傷つけないために 嘘をつくこともある すぐに責めずに 相手の気持ちを聞くこと 正直に話したことを認めること たとえ嘘をつかれても 自分がどのように受け止めるか 信じようとする気持ちは 相手にも伝わる ウソの神さま

ウソの神さま~嘘をつく小学生の息子に困っていたら読みたい話

「子どもにウソを言わないようにするのが難しい」という話をお母さんたちから聞いてこのストーリーを作りました。ウソは本当に悪いことなのか、そもそもなぜ人はウソをつくのか、考えるきっかけになれば幸いです。

ぼくは勉強も運動も苦手

ぼくのお母さんは体が弱くて、ずっと入院していた。

小学校の帰りに病院によるのがぼくの日課だった。

お母さんに会うと、いつも学校であったことを話していた。

「今日は学校の給食がおいしかった」

「先生によくできたと褒められた」

ぼくは勉強も運動も苦手。

なかなか友達もできなくて、

学校では一人でいることが多かった。

特に自慢できるようなこともなく、

自分以外のことは話すことができず。

それでもお母さんにはなるべくいいことだけ話すようにしていた。

あるとき、お母さんにうそをついてしまったことがあった。

「ちゃんと勉強しているの?」
息子
「もちろん。今度テストがあるんだ」
「そうなのね。頑張ってね」

それから全く勉強をしていなかった。

数日後、病院をおとずれると・・・・

「そういえば、この前教えてくれたテストはどうだったの?」
息子
「もちろん、よかったよ」
「そうなの。何点だったの?」
息子
「満点だったよ」

お母さんはテストのことを覚えていた。

本当はテストの結果はよくなかった。

30点しか取れてなくて、クラスでもビリに近い点数。

お母さんに心配をかけたくなかった。

「すごいわね。勉強頑張っているのね。テストを見せてみて」
息子
「見せるまでもないよ」
「見てみたいの」

ぼくはランドセルからテストの結果を取り出した。

お母さんの顔を見ないようにして恐る恐るテストを手渡すことに。

「すごいじゃない」
息子
「え・・・」

お母さんの手元を見ると「満点のテスト」があった。

ボクは何が起きたのか信じられなかった。

でも、お母さんが喜んでくれたのでうれしかった。

息子
「言ったとおりでしょ」
「勉強が苦手だったのに信じられない」

ぼくはお母さんの驚く様子を見ながら病室を出た。

なぜテストの点数が変わったのか

気分よく家に帰ろうと道端を歩いていると、

「なんでテストの点数が変わったのか不思議に思っただろう」

突然、誰かから声をかけられたような気がした。

あたりを見渡しても誰もいなかった。

「ここだよ」

頭の上を見ると、アロハシャツを着て、

サングラスを頭にかけた「変なおじさん」が浮かんでいた。

息子
「だれなの?」
神さま
「失礼なやつだな。かみさま」
息子
「本当に?」
神さま
「かみさまにもいろいろいてな。わたしはウソの神様」
息子
「そんなかみさまがいるんですか。うそってわるいことのような気がするけど」
神さま
「うそにもいいうそとわるいうそがある。さっきキミがついたうそは相手を喜ばせようとしたうそだ。いいうそだから、叶えてあげた」
息子
「神さまのおかげだったの」
神さま
「わたしはうそを本当にできる魔法の力がある。だから、きみがウソを言うたびに本当にできる」
息子
「すごいですね。これからもですか」
神さま
「もちろんだ!ただし、キミが本当のことを言ったとたん、魔法がとけてしまうので注意しなさい」
息子
「わかりました!」

ウソをつき続けることに

ぼくは病院でお母さんに会うたびにウソをつき続けた。

息子
「テストで満点をとったよ。次もとるね」

お母さんに報告するたびに試験の点数が変わった。

まったく勉強してないのに試験中に答えが思い浮かぶようになっていた。

ただ頭の中に思いかんだことを試験の用紙に書くだけ。

息子
「今度、運動会があるんだけど、ボクはクラスで一番足が速くて。リレーの選手に選ばれたんだ」

ぼくは運動が得意ではなかったのに本当に足が速くなり、クラスで一番になった。

運動会ではリレーの選手に選ばれて、1位をとることができた。

息子
「この前、おかあさんの絵をかいて、コンテストに応募したら表彰されちゃった」

ぼくが描いた絵はへたくそだった。

だけど、町の絵画コンテストに応募したら、

審査員の人に「芸術的な絵だ」と認められて、表彰されてしまった。

うそをつくたびに頭が良くなり、どんなスポーツもできるようになっていった。

まわりから「頭がいい」「すごい」といわれ、たくさん友達もできた。

うそをつくのなんてカンタンで、楽しくてしかたがなかった。

本当のことを言ってしまう・・・

ある日、ずっと気になっていたまみちゃんから告白されたこともあった。

まみちゃん
「頭もいいし、運動もできてかっこいいし、大好き」

ぼくは天にも昇るほどうれしかった。

今までまみちゃんは雲のような存在で、

声をかけることすらできなかった。

しかし、ぼくの本当の気持ちを伝えたら魔法がとけてしまうかもしれないと思った。

でも、「嫌い」なんてウソはいえなかった。

1回ぐらい本当のことを言っても・・・

息子
「ボクもまみちゃんのことが好きだよ」
まみちゃん
「うれしい」

それからぼくとまみちゃんは学校でよく話したり、

一緒に帰るようになっていった。

まみちゃんと一緒にいればいるほどたのしくて、

お母さんに会いに行く回数も減っていった。

ある日のこと

ある日、体育の授業で50メートルを走ることに。

いつものように走ろうとすると体が重かった。

今までのように走れず、誰よりも走るのが遅くなっていた。

何度走ってもビリに。

まわりからは「どうしたの?」「けがしたの?」と心配された。

「体の調子が悪くて」と言ってごまかした。

テストを受けても、すぐに答えが思いつかず、

満点をとることができなくなっていった。

先生からテストの結果が返されると、

まわりから満点であることが当然かのように聞かれた。

そのたびにごまかしたけど、

いつしかまわりはボクに期待しなくなっていた。

「まさかこんなことになるとは」

魔法がとけてしまう

そんな風に思っていると、また、ぼくのまえにウソの神様があらわれた。

神さま
「キミがルールを破ったからだ。ウソをつくなら最後までウソを突き通すべきたったのに」
息子
「そんな。1回ぐらい・・・」
神さま
「たとえ1回でも約束を破ったやつはダメだ。信用できない」
息子
「本当にすみません。もう本当のことは言いませんので」
神さま
「お前はそれでいいのか?ずっとウソをついて楽しいか?」
息子
「そう言われると・・・」
神さま
「自分らしい生き方を見せることが、親は一番喜ぶと思うけど」
息子
「自分らしい生き方ですか・・・今はわかりません」
神さま
「そんなに簡単に見つかるものではない。これから自分で探すものだ。あとは自分で考えろ」

ぼくはどうすればよいのかわからなかった。

それから一生懸命勉強したり、走る練習をしたけど

自分の思うようにはいかなかった。

何もかもできなくなったボクを見て、

友達と思っていた人はどんどん離れていった。

そして、いつもそばにいたまみちゃんさえも

「かっこわるい」といわれて、嫌われてしまった。

本当のことをお母さんへ伝えることに

ひとりぼっちになったぼくは

お母さんのいる病院へ訪れることにした。

「これまでのことを話そう」と決意した。

病院へつくと、いつものように

お母さんはニコニコしながらボクを待っていた。

そして、勇気を振り絞って、

息子
「お母さん、じつはいいたいことがあって・・・」
「何なの?」
息子
「今までぼくが言っていたことうそなんだ。勉強もできないし、運動もできないし。ごめんなさい」
「そうなの」

それでもお母さんはニコニコして話を聞いていた。

息子
「何で怒らないの?」
「実は私もウソをついていたの」
息子
「どういうこと?」
「お母さんはすべて知っていたの。あなたのことは誰よりもわかっているつもり」
息子
「そうなんだ。じゃあ、何で怒らなかったの?」
「あなたが私のためにウソをついていたのを知っていたから。本当にあなたが楽しそうに話していたのがうれしくて」

ちょっと恥ずかしかった。

突然、今まで笑っていたお母さんが真剣な顔で話し始めた。

「でもね。あなたに言っておきたいことがあるの。たとえウソをついてまわりをごまかしても、自分だけはごまかせないのよ。何も頑張らずに得たものはいつか失うし、頑張って得たものは自分の中に残り続けるの」
息子
「わかった。これから頑張るよ」
「自分にウソをつくのだけはやめてね。私は勉強ができても、できなくても、運動がでても、できなくても、友達が多くても、少なくても、どちらでもいいの。世の中に完ぺきな人なんていなくて、私は今のあなたが幸せならそれでいいの」
息子
「できなくてもいいの?本当に?」
「そのままでいいの。もう無理してなくていいから、自分の好きなように生きて。人生は自分の思うようになるものよ」
息子
「わかった」
「そうはいっても、これからうまくいかないこともあるかもしれない。もしもわるいことがあったら、空の私に向かって愚痴を言いなさい。もしも、よいことがあったら、まわりの人に感謝しなさい。自分ひとりでできることなんてかぎられているから」
息子
「どうしてお母さんが空にいるの?」
「もう私の命は長くないの。いつまでもあなたを見守っているから」

お母さんの言葉にボクは何もいえなかった。

「あとで読んで」と言われて、お母さんから封筒を手渡された。

どうしもようない気持ちを抱えながら、家へ帰ることにした。

家に帰るとすぐに封筒から手紙を取り出して読むことに。

もしかすると、これを読んでいるとき、

私はもうこの世にはいないかもしれません。

あなたにはいつも振り回されっぱなしでした。

お腹がすいたらすぐに機嫌が悪くなり、

遊んでいたと思ったらいつのまにか寝ていて。

泣いたと思ったらすぐに笑って。

そんなめまぐるしい日々も今ではいい思い出です。

元気そうに生きているあなたを見ていてうれしかったです。

あなたが生きているだけで私の支えとなり、

あなたが生きていることが勇気となり、

希望となっていました。

今でもあなたが無事に生まれてきてくれたとき、

うれしくてお父さんと一緒に泣いたことを

昨日のことのように思いだしています。

頼りないお母さんだったかもしれないけど

あなたと出会えて幸せでした。

お母さんのところへ生まれてきてくれて本当にありがとう。

いつも口うるさいお母さんだったかもしれないけど

最後にあなたに伝えたかったことをまとめました。

これから生きていく上で忘れないようにしてください。

たとえあなたには見えなくても、いつもそばにいるから。

もう1枚手紙があり、「お母さんが教えたかったこと」と書いてあった。

お母さんが教えたかったこと

自分のことばかり考えて
人に迷惑をかけないように
自分の理想に
人を当てはめないように
相手の気持ちを考えなさい
まわりに流されないように
自分にウソをつかないように
自分の気持ちに正直でいなさい
人の悪口を言うくらいなら
感謝の気持ちを口にするように
どうしても辛いときは
まわりに頼りなさい
助けてもらったことは
一生忘れないこと
嫌だったことは
すぐに忘れること
決して自分もしないように
たとえ泣いたとしても
明日は思いっきり笑いなさい
やりたいことがあるなら
今すぐやりなさい

手紙を読み終わると、

どうしてももう一度お母さんに会いたくて、

ボクは病院へ向かった。

病室に到着するとベットの上でお母さんはなくなっていた。

あとからわかったことだけど、

ぼくがお母さんと会ってない間にどんどん病気が悪くなっていたらしい。

でも、お母さんはそんなそぶりをぼくには一度も見せなかった。

ぼくを心配させないように平気なようにふるまっていた。

そんなことにぼくはまったく気がついていなかった。

お母さんに言いたいことはたくさんあった・・・

もっとお母さんと話したかった・・・

今までの自分が情けなくて涙がこぼれた。

せめてボクは最後にお母さんに精一杯のウソをついた。

「お母さんがいなくなっても大丈夫だから・・・」

ウソの魔法はきかないけど

もうウソの魔法はきかない。

自分でどうにかするしかなかった。

それからというものの、ぼくはウソをつくのをやめた。

まわりの目を気にすることなく、自分のできかぎりのことをした。

でも、いまだに勉強してもテストでよい点数をとることはなかった。

いくら一生懸命走ってもクラスではビリだった。

それでもよかった。

そんな自分を認めてくれる友達もできた。

今は絵を描くことが好きでいろいろなイラストを描いている。

ありのままの自分で生きる。

それだけでぼくは幸せになれた気がした。

まとめ

ウソをつきたくてウソをつく人はどこにもいません。

自分を守るために、自分を大きく見せるために、誰かを喜ばせるために、傷つけないために、いろいろな理由があるかと思います。

今回、主人公は「お母さんのために」ウソをついていました。お母さんも「子どものため」にウソをついていました。

ウソは自分のためならよくないかもしれませんが、相手のためなら良いかもしれません。

よく「ウソをついてはいけない」と聞きますが、それこそがうそなのかもしれません。まずは、なぜウソをついたのか聞くことが大切です。

関連(母の教え)

スポンサードリンク