🌙“永遠の地獄”に堕ちた日のこと
好きだったのに、付き合えなかった。
言葉にすると、たったそれだけのことのように聞こえるけど、
心の中では「何か大事なものが終わってしまった」感覚が確かにあった。
その人の名前を聞くだけで胸が締めつけられる。
街で似た後ろ姿を見かけるだけで足が止まる。
何でもないような日常のなかに、その人の面影が突然差し込んでくる。
そして、ふとこう思ってしまう。
「あの人じゃなきゃ、もう誰とも無理かもしれない」
新しい出会いが訪れても、誰かに好意を向けられても、
心が頑なに閉じてしまう。
“その人じゃない”というだけで、世界が色褪せて見えてしまうのだ。
🔁終わらなかった恋は、永遠に終われない
別れにもいろいろあるけれど、
始まらなかった恋が、いちばん終わらせにくい。
付き合って、喧嘩して、すれ違って、別れた――
そんなふうに形のある恋なら、
終わったことを「終わり」として受け止められるかもしれない。
でも、始まらなかった恋には、終わりの瞬間がない。
気持ちがどこにも行き場を見つけられずに、
ずっと同じ場所で足踏みを続けてしまう。
“もしもあのとき、別の選択をしていたら”
“あと少しだけ、勇気を出せていたら”
何度も何度も繰り返される「たら・れば」の中で、
心だけが取り残されて、進めなくなる。
🧊誰といても「その人」を探してしまう
誰かに好かれても、どこかで距離を置いてしまう。
優しくされても、心が動かない。
それどころか、こんなふうに思ってしまう。
「この人は、あの人じゃない」
比較しているつもりはないのに、
どこかで無意識に“あの人の幻”を探してしまっている。
目元のかたち、声のトーン、話し方、笑い方、考え方。
どれも違うとわかっているのに、
どこかに“似ている何か”を求めてしまう。
でも、どれだけ探しても、
「その人と同じ人」は、もう現れないのだ。
わかっているのに、心が納得しない。
そこが、この地獄の本当の怖さ。
🪞なぜ、あの人でなければだめだったのか
どうして“その人”じゃないとだめなのか。
なぜ、ほかの誰かじゃ埋められないのか。
それはきっと、その人が
「理想の相手だった」からではない。
むしろ、その人と過ごした時間のなかに、
“あなただけの気持ち”が、濃密に詰まっていたから。
・あのとき、勇気を出して話しかけたこと
・気づいてもらえなかったやさしさ
・一緒にいた時間に宿った小さな期待
・届かなかった「好き」という気持ち
それらすべてが、“あなたの中の真実”として生き続けている。
だからこそ、その思いを「なかったこと」にできないのだ。
🌱それでも、生きていかなくてはならない
どれだけ苦しくても、
世界は容赦なく明日を連れてくる。
仕事はあるし、生活は続く。
ごはんを食べて、笑う瞬間もある。
表面的には、ちゃんと日常が流れていく。
でも心のどこかでは、まだ終わっていない。
まだ引きずっている。
まだ好きなまま。
そのまま、次の人に出会うなんてできない。
「また好きになれるよ」なんて、信じられない。
でも、それでも――
私たちは、生きていかなければならない。
それがどんなに歪でも、不完全でも、
心が追いつかなくても。
🧩「地獄」も、いつか形を変えていく
今はまだ「永遠に地獄」と思っているかもしれない。
でも、人の心は、ずっと同じ形ではいられない。
・ふと、思い出しても泣かなくなった
・懐かしいと思える瞬間が来た
・少しだけ、新しいことに目を向けられた
・自分の気持ちを、過去として語れた
そんなふうに、地獄の輪郭は少しずつ変わっていく。
忘れることはなくても、
痛みが“居場所を変える”ことはある。
それは突然ではなく、
静かに、ゆっくりと、時間の中で起こる変化。
🌸あなたの人生は、まだ終わっていない
好きだったのに、付き合えなかった人。
その人があなたの中に残したものは、喪失だけではない。
あなたは、ちゃんと人を好きになれる人だった。
本気で想う力がある人だった。
そのこと自体が、かけがえのない“あなたの美しさ”なのだ。
そして、あなたの人生は、まだ途中にある。
これから、あなたが出会う人は、
あの人と同じではないけれど――
あの人とは、また別の色を持った、まったく新しい誰かかもしれない。
すぐには信じられなくても、それでいい。
時間がかかっても、いい。
その人と“あの人”を比べるのではなく、
その人とだけで築く、新しい記憶を大切にできるように。
その日が来るまで、
どうかあなたの心を、急がせないであげてください。