眠れない夜に、スマホを握りしめる理由
「明日も早いのに、なぜ私はまだ起きてるんだろう?」
こんな疑問を抱えながら、夜中の2時にYouTubeを流し見している自分がいる。
布団の中でスクロールする指先は止まらず、頭のどこかではわかっている。
「今すぐ寝た方が、明日きっと楽になる」と。
でも、そのままスマホを閉じることがどうしてもできない。
なぜ私たちは、夜更かしをしてしまうのでしょうか?
眠れないのではなく、眠らないことを選んでいるとしたら。
その背景には、私たちが見過ごしてきた「ある欲求」が潜んでいるのです。
時間を奪われ続けた日々
朝は慌ただしく起きて、通勤電車に揺られ、職場では終わらない業務。
気づけば夕方。会社を出る頃には、心も体もヘトヘト。
帰宅しても、洗濯・夕飯・片付け……
ようやく自分の時間が訪れるのは、すべてが終わった「深夜」になってから。
この時間だけが、自分の人生を感じられる。
だから、たとえ眠くても、疲れていても、スマホを開いてしまうのです。
SNSを眺めて、YouTubeを見て、漫画を読みふける。
それは「今日一日、私はちゃんと生きてた」と感じるための儀式。
「報復性夜更かし」という言葉をご存じですか?
中国で広まった言葉に「報復性熬夜(ほうふくせいこうや)」があります。
英語では “Revenge Bedtime Procrastination”。
意味はそのまま、「日中に自由を奪われた人が、夜にその埋め合わせをしようとして眠るのを後回しにする」こと。
つまり夜更かしは、ただの生活習慣の乱れではなく、心理的な反抗なのです。
「昼間は自分のために生きられなかった。だから、夜だけは自分のものにしたい。」
この行動には、切実な自己回復の願いが込められています。
心の中の“反乱”に気づくこと
この事実を知ったとき、夜更かしに対する見方が変わりました。
「意志が弱い」「ただの怠け癖」だと思っていた自分を、少しだけ許せるようになる。
私たちは怠けているのではなく、必死に“自分”を守ろうとしているのかもしれません。
思い返せば、子どもの頃。
寝る時間になっても「まだ寝たくない!」とごねていたのは、
その日が終わるのが寂しかったから。
大人になっても、それは変わらないのかもしれません。
「今日」という1日が、自分のものだったと感じたい。
そんな純粋な願いが、夜更かしというかたちで現れているのです。
夜更かしを責めるのではなく、問い直す
もちろん、睡眠は大切です。
夜更かしが習慣化すれば、体や心に不調をきたすこともあります。
でも、「早く寝なきゃ」と自分を責める前に、
**「なぜ私は、夜に自分を解放したくなるのか」**を問いかけてみてください。
もし昼間にもっと自分の時間があったなら。
もし仕事に追われず、好きなことをする余裕があったなら。
もし、誰にも邪魔されずにぼーっとする時間をもてたなら――
もしかすると、夜に執着する必要なんて、なくなるのかもしれません。
夜更かしが教えてくれる、人生のバランス
夜更かしとは、自分の人生の主導権を取り戻そうとする行為。
だけど、“自分らしさ”を夜にしか感じられない生活は、やっぱり苦しい。
だからこそ必要なのは、夜を我慢することではなく、
日中の時間に“自分”を取り戻す工夫。
たとえば――
-
通勤時間に好きな音楽を聴く
-
昼休みに5分だけ目を閉じて深呼吸する
-
「やらなきゃいけない」より「やりたい」ことを1つ選ぶ
そんな小さな積み重ねが、
「夜の報復」ではなく、「昼の回復」につながっていくのです。
あなたの夜更かしは、何を訴えている?
次に夜更かしをしてしまったとき、
その行動を責めるのではなく、少し立ち止まってみてください。
「今日の私は、どんな時間を過ごした?」
「何に我慢して、何を後回しにした?」
「いま、本当は何がしたい?」
夜の静けさの中に、
あなた自身の声がきっと隠れています。
夜更かしとは、
**自分の存在を取り戻すための“やさしい叫び”**なのかもしれません。
まとめ:夜更かしの理由に、耳を澄ませよう
夜更かしをやめたい。そう願う人は多いです。
でも、「ただ眠る」だけでは、本当の解決にはなりません。
その夜更かしが訴えている“何か”に、まずは気づくこと。
自分の時間が奪われていると感じているなら、
その気持ちをごまかさずに、見つめてみましょう。
夜に取り戻そうとしていた「自分らしさ」。
それを、少しずつ日中に取り戻していくことができたら。
私たちはもっと自然に、安らかな眠りにつけるのかもしれません。
あなたが今日、少しでも“自分のための時間”を持てますように。